オレの幼少時代、長男だから親が甘くてね。マンガが欲しいって言ったら五冊でも十冊でもまとめて買ってくれてたの。中でも特別に好きだったのは赤塚不二夫と藤子不二雄で、この二人(正確には三人)の作品だけで、何百冊買ってもらったことか。そうやって幼い頃にマンガを乱読したこと(甘やかせて育てられたことも含めて)が、良くも悪くも今のオレを形作ってることは、自負すると同時に誇りにも思ってて。
そんな赤塚作品に人一倍思い入れの強いオレだけに、赤塚不二夫展には「面白いのかあ?」なんて少々疑念を抱いてもいたんだけど、そんなものは入ってすぐに吹っ飛んじゃったですよ。面白いし、かっこいい!
まずエントランスでループ再生されてるオープニングアニメのクールなことったら! 赤塚作品を単にモチーフとして使っただけじゃなく、本当に好きで理解してるからこそ作れた映像だということがわかる。中ではよくある回顧展よろしく原画や年表、作品、写真などが展示されてるんだけど、それがただ展示されてるだけじゃなく、異様に大きかったり、逆さまに展示されてたり、傾斜を付けて展示されてたりと、その展示方法がいちいち赤塚作品へのリスペクトに溢れてて飽きさせないのよね。会場デザインを見ると祖父江慎の名前が! 主催者もこうなると確信を持って依頼したはずで、結果とともに、その覚悟がまたかっこいいよなあとか思ってみたりもして。
そして圧巻だったのは最後に待ち構える「シェーッ!の部屋」。タモさんを代表とした大勢の赤塚ファンを自認する有名人がシェーッ!のポーズを取った写真や、有名漫画家が自身のキャラにシェーッ!のポーズをさせた原画が150枚以上もズラリと飾られてて、部屋に入った途端に目頭が熱くなってきちゃって。みんなが本当にいい顔してて、ヤバい、優しすぎる。そっか、赤塚作品に人一倍思い入れが強いのなんてオレだけじゃなかったんだな。みんな、本当に赤塚作品を愛してるんだなあ、なんて。この150枚だけでも入場料の価値あり。そして出口に展示された改名年表のオチ。天才バカボンの連載中に赤塚不二夫が思いつきで「山田一郎」に改名したことがあって(その後、すぐに元の名前に再改名)、展示内でそのネタをやけに押して来るなあとは思ってたんだけど、そっか、そう来るかあ。ここで必死に涙をこらえたのはオレだけじゃなかったはず。本当に素晴らしいイベントでした。
ちなみに赤塚不二夫論としては、ここで取り上げられている松尾スズキが語った内容が非常に興味深い。
赤塚さん本人の身体を使った笑いで成功しているのを僕は観たことがないですね。なんか知らないけど、赤塚さんが写真になったり映像に出てるのを見ると、ある種の悲惨さを感じるですよ。こんな真っ正面からの酷評は初めて見たし、心から同意出来る。そう、幼少時代、マンガを超えて赤塚不二夫自身に興味を抱き、親に駄々を捏ねて買ってもらった大人の雑誌で見た赤塚不二夫は本当に笑えなかった。でもそこをも踏まえて赤塚不二夫はアートだと、ある種の諦めとともに松尾スズキは語ってんのよな。なるほど、オレはやっぱり「赤塚作品」が好きなんだけど、「赤塚不二夫」を好きであろうとすると、そう納得するしかないのかなあと。ともかく、今のオレみたいなダメ人間を量産したことも含めて、いろんな意味で罪作りな人ですよ、赤塚不二夫は。
(中略)
なんか漫画で得た評価をチャラにし始めてる時期なのかな、っていう(笑)。だから赤塚さんの遊びを僕らは見せられて辟易していた時代っていうのはありますよ(笑)。
■ 今日の一曲
最近カラオケで、オレの中でピートパンクブームでして(恥)、その中から珠玉の一曲。サビが最後の一度(4:05あたり)しか出てこないって構成も好き。このバンド、当時も思ってたけど、今聴いてもギターの人のセンスが抜きん出てる。この人、バンドに恵まれてたら布袋みたいな位置までいけたんじゃないかね。
The Bell's - The Love Song