2012年1月19日

さよなら、SARASA。 【前編】

かれこれ20年ほど、頭の中を回り続けてる曲がありまして。

話は高校時代に遡って1988年、オレ17歳の春。時はバンドブーム真っ只中。
オレも違わずブルーハーツの物真似バンドをやって、
学校帰りには粋がってアメリカ村のレコード屋を覗いたりもして。
まだCDが普及してなかったこの時代の主流はレコード&カセット。
でも金がない高校生にはレコードなんてそうそう買えるはずもなく、
友達から回ってきたテープをダビングした、孫コピー、曾孫コピーの音の悪いテープを
伸びるまで何度も何度も繰り返し大切に聴いていた、そんな時代でありました。
ちなみにこのころ愛用してたウォークマンはSONYじゃなくてAIWA製。泣ける。

その当時の尖ったレコ屋はインディーズの音源を広く取り扱っていて、
新しい音楽との出会いももちろん楽しみだったけれど、
日本全国のオレらみたいな素人がレコードを出して、それがこうして全国に流通されてる、
そのことに無性に感動を覚えた、まだチェリーボーイのオレなのでした。
ちなみに童貞を捨てたのはこの年の夏・・・どうでもいいスか。そうスか。
ちなみに相手はライブに来てくれた・・・あ、これもどうでもいいスか。そうスか。

でもいくら当時がバンドブームだからといっても、
ちゃんとしたレコードを出せるのはよっぽど売れてるバンドぐらいであって、
大方のバンドはハクを付けたいがために自力でソノシートを出し、
ソノシートすら出せない貧乏バンドはカセットを作るわけですよ。
これだと録音さえすれば後は自宅でダビング出来るし、ジャケットもコピー機で充分。
数本しか売れなくても、ダメージは録音したスタジオ代程度。
音質なんて二の次、三の次。誰が聴くの?という疑問も受け流し、
何はともあれ作品を作りたい、という客観性不在の初期衝動だけで作られたカセット。
当時のレコ屋にはカセットを扱うコーナーが大きく設けられていて、
そこには手作り感丸出しの白黒コピーを纏った数百円のカセットが、
心意気だけはレコードに負けず、小さく存在を主張していたのです。

ここでようやく本題に入って(前置き長すぎ)、そんなレコ屋で買ったカセットの話。
千葉のミュージアムってレコ屋が、アマチュアバンドのオムニバスを作っててね。
「MUSEUM TAPE」と名付けられたこのオムニバスシリーズに収録されてたのは、
ビートパンクから正統派R&R、ハードコア、ナゴム系おふざけバンドと多岐に渡り、
そのお値段、16曲入りで150円。iTunesだと1曲分の値段(笑)。
当時、偶然レコ屋でそのテープを目にした高校生のオレは、
そのハンパないコスパに釣られて即買いするわけだ、内容も知らずに。

そうしてオレが偶然手にしたのはオムニバスシリーズの三本目「MUSEUM TAPE 3」。
そこに収録されてた「つれづれ草」ってビートパンクバンドが格好良くて、
後に発売されたソノシートも即買い・・・いや、友達に買わせてテープに落としたんだっけ(笑)。
あと、つれづれ草ともうひとつ、気になったバンドがいてさ。
透き通った女性ボーカルで、童謡のような、なんとも形容しがたい浮遊感に溢れた、
それまでのオレが聴いたことのなかった優しい音楽をやっていて。
パンク一直線だった当時のオレはいい曲だと思いつつも、さほど気にも留めることもなく、
そこから月日は流れて、オレの中では「MUSEUM TAPE」という名称もそのバンド名も、
すっかり忘却の彼方に追いやられちゃって、
「安いテープに入ってた女性ボーカルのバンド」程度の記憶になってたのね。
しかし恐るべきは高校生の聴力と吸収力ですよ。
名前こそ忘れたものの、曲に関してはメロディはおろか、ソロパートや構成まで、
もう20年も聴いてないのに、鮮明に覚えてるのね。
今でも時折、そのバンドの楽曲群がふと頭を回るときがあって。
この曲って何だっけ、ああ、あのカセットに入ってた曲だ、と。

そんな話を高校からの友達(当時のバンドのベーシスト)と話してると、驚愕の展開に。
友達「それってMUSEUM TAPEだろ? オレも買ったし、まだ持ってるぞ」
オレ「マジで !? そうだ、確かそんな名前だ! 頼む! 貸して貸して!」
なんと、こいつが24年前のテープをまだ持ってると。
そういうわけで、後日カセットを受け取る運びとなりまして、
感慨に耽りつつカセットレーベルを眺めてると「SARASA」という名前が。
SARASA? ・・・そうそう! バンド名はSARASAだったわ! 思い出した!

(つづく)


■ 今日のiPhone話。
iPhoneを買う前から待ち受け画像だけは決めていて、買って以来ずっとこれ
何の変哲もないありがちな壁紙なんだけど、
実はこの画像、Appleが初めてiPhoneを発表したときの壁紙で、
それ以来、オレの中では「この画像=iPhone」のイメージが離れないのです。