2014年10月27日

セキュリティとバランス。

先日書いたように、44歳にしてついに就職童貞を破ったですよ。
絶対にリーマンになんてなるもんか、と鉄の貞操帯を付けていたこのオレが、
貧乏という性欲に負け、
スーツというコンドームを身に纏い、
企業という膣に向かって突進し、
労働という摩擦を経て、
給料というエクスタシーを得、
所得税という精液を放出し、

…あ、この例え、もういいスか。そうスか。
(この下り、声に出して綾小路きみまろ調に読んでネ☆)

つーかね、派遣社員なんで、いきなり大企業勤務ですわ。
そこでユーザーサポートに就くため、現在研修中の身なんですが、
どうしてあんなにアホなのかね、最近のセキュリティ管理ってやつは。

彼女も先月、勤めていた会社が吸収合併されたところでね、
今まで昔気質の会社でユルく働いてたのに、
いきなり今どきのセキュリティ管理下に置かれて、
会社に入るカードキーの都合上、休日出勤の手続きが面倒だの、
帰宅時にノートPCは引き出しにしまうよう指示をされただの、
アホくさ、という事例を聞かされていたものの、
まさかその翌月、オレも同じ境遇に陥るとは思わなかった。

入社してからずっと研修でね、派遣先の会社が扱ってる商品の勉強をするわけよ。
その研修テキストを「社外秘だから持ち出し禁止」というのは、まあわかる。
で、勉強するわけだからノートにメモ取るでしょ。
そのノートも持ち出し禁止というのも…うん、まだわかる。納得はできないけど。
次に商品に付属する取扱説明書のコピーを配布されて、
商品の使用方法をユーザー目線で学んでたわけ。
このボタンを押せばこんな動作をしますよ、みたいな。
そしたら研修途中に言われたですよ。

「あ、このコピーも持ち出し禁止ですから」

…はぁ !? どういうこと !?
取扱説明書よ? それって商品を買った人ならみんな持ってるものでしょ?
つまり一般的に流通してるものでも持ち出し禁止? しかもコピーなのに? 意味がわからない!

まあ、この研修のトレーナーがバカというよりも、
この人は会社のバカなセキュリティ管理要項に従ってるだけなんだろうけど、
とにかく非核三原則よろしく、持ち帰らせない、勉強させない、育てない、ですよ。
こっちはさ、就職したばかりでやる気スイッチも満充電の状態だから、
帰ってからも復習して、早く知識を身につけたいと真面目に考えてるわけ。
社員の成長。それって会社の利益でしょ。
その利益を捨てて、セキュリティを取る、と。
そりゃね、この情報漏洩が多発している現代社会、
自社のセキュリティに危機意識を持つのは理解できる。
でも、それって資料や情報の重要度によるでしょ?
オレは研修中で、たかだか「その商品の概要」程度のことしか知らされてないわけ。
つーか、そこで知った専門用語をググったら…ネットで普通に出てきたよ!
その程度の知識を拡散されたところで被害なんてないだろうし、
もしオレが企業スパイなら、学んだ内容を口頭で伝えれば充分だしさ。もうすでに遅いっての。
こんなセキュリティ管理、なんの意味があるの?

あのね、すべてはバランスなのね。
入室のセキュリティを万全にしたいなら、鍵を100個付ければいいじゃん。
でも付けないよね。鍵を開けるのに何時間もロスするから。
かといって鍵を付けないのはおかしいよね。それだと泥棒や企業スパイに入られちゃうから。
じゃあ鍵をひとつ付けよう、と。
それだとセキュリティも適度に守られて、利便性も適度に保たれる、と。

本来、セキュリティってそういうバランスで成り立ってたはずが、
どこかのバカが「海外ではこれが常識だ」とばかりに過剰なセキュリティ意識を説き始め、
これまたどこかのバカが「当社も乗り遅れちゃいけない」と追っかけて、
今のようなセキュリティ最重要主義がまかり通ってるわけですよ。
セキュリティ管理のために、利益や利便性を捨てる羽目に陥ってるわけですよ。
彼女の例にしたってそうで、こっちは会社のために休日出勤をしてまで貢献してやろうと言ってるの。
なのに、セキュリティがその邪魔をするって、いったいどうなってんの。

一昔前、それこそカードキーなんてメジャーじゃなかったころは、
出社と帰社のときにしか部屋に鍵なんてかけなかった会社、部署もたくさんあって。
ノートPCや資料、データも持ち出し放題で、うちに帰って仕事の続きをしたり、
繁忙期は会社に無断で友人を連れ込んで、バイトとして手伝わせたりとかね。

振り返ると非常に危機管理意識がない悠長な時代で、
そのころに戻ろうとまでは言わないけど、言ってみれば「セキュリティ意識0時代」だよね。
で、今は「セキュリティ意識100時代」じゃん。
…いやね、オレが昨今のセキュリティ管理をバカだと感じるのはここですよ。
どうして0か100なの? どうしてその間がないの? バカなの? 死ぬの?
利便性と情報流出を天秤にかけりゃ、そりゃ後者の方が重いのはわかるけど、
だからといって利便性を丸ごと捨てるってのはバカのやることでしょ。

これって企業体質だけじゃなく、個人の事例にも見られることで、
砂糖は体に悪いから一切摂らないとか、子供にテレビは一切見せないとか、
癌治療は断固拒否するとか、イスラム教信者は全員危険思想の持ち主だと思っちゃうとか、
極端な悪例を見て、恐怖心からその対極に走っちゃう単純な人な。
オレはこういう二元論的バカたちを「デジタル脳」(0か1しかないから)と呼んで蔑んでんだけど、
そうして自分をがんじがらめにしちゃってるバカって相当数いるよね。

話が逸れた。
オレの場合だと、流出してもまったく問題のない資料に関しては持ち帰っても構わないだろうし、
それってオレが勉強したら会社の利益、情報漏洩してもリスクなんてない、
つまり「利益100、リスク0」のノーリスク・オールリターンな好案件でしょ。
それをも放棄しちゃうってのはなんなんだろうね。やっぱバカとしか思えんですよ。

…こんなことで憤ってるオレは、やっぱり就職するべきではなかったのか?