2011年3月22日

初恋は淡く気持ち悪く。

友達から聞いたんだけど、去年中学の同窓会があったらしくてね。おいおい、聞いてないよ! 一応その数週間前に実家に電話があったんだけどさ、「85年度卒業生の松本ですが、学年全体の同窓会のお知らせです。隣駅の居酒屋で会費は5000円です」だって。ハガキじゃなくて電話、告知が数週間前、学年全体(300~400人ほど)なのに居酒屋、名前がベタな「松本」。そんなの普通信じないじゃん? どうせ不当に手に入れた名簿で宗教かマルチの勧誘でも目論んでやがんだろうって疑うじゃん? じゃあ本当に開催されてやんの。やるせねーよ。

もし同窓会があったら、オレにはどうしても謝っておきたい、そして和解しておきたい人がいてさ。これ、十年ほど前の日記で軽く書いたことがあるんだけど、今でもトラウマになってる切なくも気持ち悪い話。

小学校のときに転校してきて、たまたま座席がオレの隣りになったのが縁で、小学~中学時代の本当にイケてなかったオレをずっと好きでいてくれた女の子がいてね。ま、そのころの女の子って恋愛が本業みたいなとこあるからさ、たまたまオレが選ばれたってだけで、ターゲットは誰でもよかったとは思うんだけど。で、小学校から中学校までバレンタインのチョコもずっともらってたわけ、ハートマークがたくさん書かれたメッセージカード付きで。でもその当時のオレは本当に本当に奥手で、周りにからかわれるのが嫌だから、つまらなそうに「あー、はいはい」なんて受け取って。女子中学生なんてオバサン以上に噂好きじゃん? だから周りの女子は「チョコ食べた? ホワイトデーのお返しは?」なんて囃し立ててくるんだけど、それが嫌でさ。「どうでもいいだろ。あいつは色キチガイだ」なんて言って。酷ぇ(笑)。

でも本当はオレも大好きだったのね。毎晩その子のことを思い浮かべては悶絶するくらい好きだったのね。バレンタインチョコも、実は心底うれしくて、食べずにずっと大切に保管しておいたりして。付き合って、肩を並べて、手なんかも繋いじゃって、街中をデートする光景をどれほど夢見たことか。そんなに好きだったのに「セックスしたい」とは思わなかったのは中学生ゆえ。「抱きしめたい」とは幾度も思ったけど。

で、中二のときだったか。いよいよ「付き合ってください」って正式に告白されたわけ。そりゃ気が狂わんばかりにうれしいですよ。夢が叶う日が来ましたよ。でもね、今と違って中学生が純朴な時代だったってこともあるけど、恋愛スキル皆無のガキだったオレにとって「付き合う」って選択肢はありえなかったのね。付き合うということがどういうことかすらわかってなくて、恥ずかしいことだとすら思ってて。周りの同級生の目、親の目、近所の人の目、そして客観的に自分を見てるオレ自身の目、そんなものばっかり気にして、返事も出来ずに一旦保留ってことにしたの。
ここからがオレの本当にイケてない、気持ち悪いところなんだけど、どうしていいかわからずに、何を思ったか母ちゃんに相談したのな。「ママ、どうしたらいい?」って。中二だよ? ガキにも程があるでしょうよ! 今の小二でもこんなこと言わねぇよ! おそらく「付き合えばいいじゃない」って親の承諾が欲しかったんだろうな。でも母ちゃんは非情にも言うわけよ。「今は大切なときなんだから、学業に専念する方が重要でしょ」って。そりゃ親に相談したらそうなるわな。

それから一週間後、とうとうその子から呼び出しを受けてね。放課後、西日の射す廊下で二人向き合って、「答えを聞かせてほしい」って。オレも覚悟を決めて言いましたよ。

「えー・・・あの・・・えーと・・・あの・・・その・・・なんというか・・・あの・・・あ・・・えー・・・オレは・・・あの・・・うん・・・その・・・あー・・・その・・・えーと・・・あのー・・・ん・・・うん・・・あの・・・その・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

そのまま一時間半が経過! バカ! キチガイ! 本当は付き合いたいのよ? なのにどうしても言葉が出てこない。全身から変な汗をかいて、緊張のあまり喉を詰まらせてさ。それでもその子は健気に待ってくれてて、情けないやら申し訳ないやらで焦りはさらにつのって。早く何か言わなきゃいけない、このままじゃ終われない、って必死に踏ん張って、一時間半後にようやく口にしたのがこの言葉。

「あのー・・・や、やっぱり僕ら勉強が本分だから、つ、付き合うのはよくないかなって・・・」

バカ、バカ、大バカ! 気持ち悪さMAX! そんなこと微塵も思ってないくせに! もちろんその子は呆れて帰っちゃって、こうしてオレの初恋は終わったのでした。

和谷美子さん、あのときは本当にすいませんでした。今でもたまにあの廊下での光景を思い出し、赤面すると同時に深く責任を感じ反省する次第です。今後同窓会で顔を合わせることがあれば、遠慮なく殴っていただいて結構です。